リハビリ看護Rehabilitation Nursing

パーキンソン病は、進行性疾患であり、安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害などの運動障害により身体機能が低下していきます。さらに、自律神経症状や精神症状など様々な不都合も現れてきます。治療早期から薬物療法と運動療法によるリハビリを同時進行することが推奨されています。当病棟では、患者さんが病気と共存しながら生活できるように退院後の生活を見据えた看護を行っています。

入院

担当看護師を窓口に看護師がチームとなって患者さんの意向を大切にした関わりを心がけています。入院当日から、在宅での生活状況をお聞きし、退院後の生活を見据えたリハビリや目標を決めることができるように、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・音楽療法士・医療ソーシャルワーカーで意見や情報を交換し、カンファレンスを開催しています。

食事

言語聴覚士とともに嚥下機能を評価し、水分摂取の工夫、水分量、食事の形態について提案しています。医師と管理栄養士の連携により、治療食への変更、カロリー相談、食事の形態の変更など患者さんに合わせた食事を提供しています。また、必要時、自助具や改良皿を使用した食事動作の自立を目指しています。

排泄のケア

パーキンソン病になると自律神経の障害により、便秘、起立性低血圧、冷え、排尿障害などが起こることがあります。
排尿障害に対して、泌尿器科と連携し1日尿量や残尿測定、検査などを行い、頻尿、排尿困難、失禁へのケアを行っています。

日々の治療と看護師の関わり

リハビリ開始前のウォーミングアップ

患者さんの心身機能を高め、リハビリを導入しやすくする目的で、毎朝リハビリ開始前にナースステーション前でラジオ体操を行っています。患者さんからは、「朝の動きが良くなった。」「リハビリ時に動きやすい。」「同じ病気の人と話す良い機会になった。」などの声が聴かれ、集団で楽しみながらラジオ体操を行っています。

ナースステーション前でのコミュニケーション

患者さん達はリハビリ送迎時の待ち時間に、ナースステーション前に設置した椅子に座って、他の患者さんや看護師と会話を楽しんでいます。神経難病を抱えながら生きるうえで、話を聞いて欲しい、聞きたい、と思う患者さんもいます。患者さん同士や看護師との距離が縮まり、サロンの役割を果たしていると患者さんから好評です。

歩行の工夫

患者さんは、手足の動きが不自由になる、震える、歩行が不安定になる、体のバランスがとれなくなるなどの症状が現れます。その症状と折り合いを付けながら暮らすには、環境を整えることが大切です。患者さんが歩きやすいように、廊下の床に均等の間隔(約50cm)で目立つ色のテープを貼っています。

転倒予防

患者さんは、その時々の状態に応じて歩行器や車椅子を使い分けています。床に歩行器や車椅子の配置をテープでマーキングして定位置を決め、決まった方法での移動と環境整備を行うことで、転倒予防に繋げています。

デュオドーパ治療

デュオドーパは、経胃瘻空腸投与により、薬剤の安定した吸収を可能にしたレボドパ製剤です。
入院中に、使用方法・注意事項・アラームへの対処方法・副作用胃瘻の管理方法を患者さんとご家族に指導します。

院内デイ

院内デイでは、折り紙や画用紙を使用して創作や、ゲームなどに取り組んでいます。
入院生活の中で、出来るだけ季節を感じられるように、廊下に作成した作品を展示しています。
参加者の身体機能や活動量、興味などによって、その都度内容を変更しています。
院内デイの時間を楽しみに待ってくれている方もいます。

退院に向けて

退院支援・調整

安心して退院を迎えられるように、患者さんやご家族の意向を確認します。入院1か月後、各担当者が退院に向けて目標の見直しや課題について話し合います。後日患者さん・ご家族に医師からの面談でその内容を説明します。
退院前には、生活動作、ご家族の介護、住宅改修、介護サービスなどでお悩みの方に、退院前カンファレンスを実施しています。地域の医療・介護スタッフと病院スタッフが話し合い、安全で暮らしやすい生活に向けた退院調整を行います。

住宅訪問・退院後訪問

入院時に住宅環境のことでお困りの方、住宅改修が後に必要と なりそうな方には住宅見取り図を依頼しています。退院に向けて、医師の指示のもと看護師・理学療法士・作業療法士、医療ソーシャルワーカーなどが自宅を訪問し、退院後の生活の準備を支援しています。必要な方には退院後にも自宅を訪問し、生活状況の確認や必要なアドバイスを行います。